さまよえる膵炎人

膵炎とそれなりに楽しく暮らす人の日々雑記

私的「この世界の片隅に」記録




昨年2016年11月に公開された長編アニメ映画
この世界の片隅に」は、これを書いている今も
絶賛公開されております。(2017年2月22日現在)

映画のパイロットフィルムを作るための
クラウドファンディングに参加したことから、
不思議と他人事ではなく、おこがましい言い方をすれば、
まるで自分が制作に携わっているかのような気持ちで
行く末を見守ってきた映画が、公開から数か月を経ても
まだ劇場にポスターが貼られ、なおかつあちこちのメディアで
日々取り上げられたりしている様子を見ていると、
とても嬉しく、ほかほかした気持ちで毎日を過ごしている昨今。

原作を読んだきっかけは、当時勤めていた会社の社長に、
「面白かったから読んだら」と渡されたからでした。

2009年当時、文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を
受賞したというニュースを見てタイトルは知っており、
作者のこうの史代さんの作品も「夕凪の街桜の国」を
読んでいたことから知っていたため、
すぐに読んでみたところ、かなり衝撃を受けました。

戦争の時代を生きた当事者ではない作者が、
この物語を描き切ったことがまずは衝撃で、
物語の完成度も非常に高く、緻密に細部まで
調べられた当時の時代考証に基づいた物語には
リアリティがありました。

押しつけがましいことは一切ない物語が、
それゆえに訴える力を持っていると感じられ、
万人受けするとは思えないけれども、
それでもこれだけの漫画は、もっと広く世間で
読まれたらいいのにと感じる読後でした。

その頃は身近な友人におススメするくらいで、
その後は本棚の片隅に時々読み返す漫画として置いておくに
留まっていたのですが、それからずいぶん経った2015年、
ネットの情報でアニメ映画を作るためのクラウドファンディング
するという話を知り、気になって詳細を見てみることに。

今回のクラウドファンディングで集めるお金は
映画全体の制作費としてではなく、
すでに出来上がっているシナリオ・絵コンテを元に
次のステップに進むため、パイロットフィルムの
制作に使うとのこと。

片渕監督のことはその時点ではほとんど知らず、
それでも映画制作にまつわる情報から垣間見える人物像は好ましく、
どんなことをしてでも映画を完成させたいという情熱は
伝わってきました。

それならば本当にささやかではあるけれども、
クラウドファンディングに参加して応援したいと思い、
開始とほぼ同時に申し込みをすることに。

しばらくしてから開催された制作支援メンバーミーティングでは、
パイロットフィルムが公開され、少し出来上がってきた冒頭部分を
一足先に観られて感動。もしこの映画が、このパイロットフィルムの
クオリティを保ったままで完成したら、えらい映画になると思いました。

すずさんからの手紙という企画もあり、
時々、まるですずさんの直筆かと見まごうような
完璧な雰囲気の印刷と演出で届いた葉書を読みながら、
すずさんと友人になったような気分になり、
折々に届く制作支援者向けのメルマガから
映画は粛々と制作が進められていると知ることが出来ました。

公開初日となった、2016年11月12日。
twitterなどの情報から、公開一週目の動員数は重要らしいと
知ったこともあり、初日にご近所の映画館に。

原作の世界そのままの世界が、色を持ち、奥行きを持ち、
音を、広がりをもって、そのまま映画となって存在する
奇跡のような完成となっていました。

何か映画について語っても、あまりに映画が圧倒的な
力を持っているため、言葉では語りきることが出来ない、
語るほどに言葉は陳腐に感じられてがっくりするような、
そんな映画でした。

これほどまでに素晴らしく出来上がった映画だけれど、
果たしてどのくらいの間、映画館で観ることが出来るか…と
懸念していましたが、徐々にメディアへの露出もあり、
SNSの口コミでは観た人々の熱い感想があり、
観客動員数も伸びて行く様子はただ嬉しく。

そして2017年1月にはキネマ旬報ベスト・テン
日本映画作品賞を獲得。
素晴らしいタイミングでの受賞で、上映館数も伸び続け、
まだしばらく映画館での上映が続いていきそうです。

映画のエンディングロールについては、
クラウドファンディングの参加者が3000人を超えていたため、
全員を載せることは難しいのではと思っていましたが、
本編と分けて作ってありました。

自分の名前をかなり頑張って探しましたが、
一回目は見つけられずにしょんぼり。

でもパンフレットを購入して帰ったら、パンフにも
きちんと載っていて、自分の名前を見つけられて感動。

すぐに二回目を見に行って、今度は無事にスクリーンで
見つけることが出来ました。
素晴らしい映画の片隅に、自分の名前を見つけられて
本当に幸せでした。

ここから先は、ちょっと想定しなかった出来事も。

公開初日に映画を観に行ったことをFBにポストしました。
友人は少ないですが、普段アニメに興味がなさそうな人にも
情報として少し届けばいいな、くらいの気持ちでした。

すると、一週間くらいしたらFBにダイレクトメッセージが。

FBで友達になっている、幼馴染みのお母さんから
映画を観たよという内容のメッセージでした。

自分の行動が、誰かを動かすこともあるのだなと、
ちょっと衝撃でした。
とても良い映画だったとの感想で、嬉しく思いました。

たまたま年末実家に帰省した際、父にその話も含めて
一連の話をしたところ、父からどこで観られるのか?と
まさかの反応。

普段もちろん父はアニメには興味はなく、
まさか観に行ってくれようとするとは思わずに
話していたので、これにも驚愕。

たまたま実家の近くの映画館では年明けに公開だったため、
場所と上映時間を教えると、本当に観に行ってくれました。

父と同じアニメ映画を観て、話をする日が来るとは。
ほっこりしながら父と映画の感想のおしゃべりをすることが
出来ました。

さらには、会社の同期入社の同僚が、クラウドファンディング
参加していることが分かったりしてお互いに驚愕。

先週は、イオン幕張新都心の9.1ch&大スクリーンで
三度目の鑑賞をしてきました。
片渕監督が現地で調整した音声で、さらに映画の世界に
奥行きが生まれてとても良かったです。

まだまだ上映が続き、沢山の人々に「この世界の片隅に」が
広がればいいなと思っています。